TURN 1 — 種明かし
原曲は、
1978年。

原曲音源の映像より。1978年のシングル盤ジャケット、題字の部分
GODIEGO(ゴダイゴ)「モンキー・マジック」。日本テレビ系ドラマ『西遊記』のオープニングとして、1978年に生まれた。ジャケットの帯には「『ガンダーラ』に続き……」の口上。前作に続く二の矢として、テレビの中からお茶の間へ飛び出してきた曲だ。
ここまでにしておく。歴史の講義をしに来たわけではない。
さっきの四つ打ちと、この1978年の間には、48年の距離がある。それを耳で確かめてほしいだけだ。
GODIEGO「モンキー・マジック」
48年。それでも、走るスピードは落ちていない。
TURN 2 — 再現性の確認
偶然、一本だけ
出来がよかったのか?
それを確かめる方法は簡単で、もう一本聴けばいい。今度は1999年のaiko「カブトムシ」を、90年代シアトルのグランジに"翻訳"した一本。存在しない90年代の、存在しないバンドの、存在しないライブ映像つきで。
aiko「カブトムシ」× 90's Seattle Grunge(AIカバー)
偶然、一本だけ出来がよかったわけでは、なさそうだ。
ここまでは、遊びの話。
ここからは、事件の話。
TURN 3 — 2025年、アメリカ
Xania Monet(ザニア・モネ)
2025年の夏に最初の曲を出したばかりの、R&Bシンガー。の、姿をしたAI音楽プロジェクト。その曲がどうなったか。
“How Was I Supposed to Know?”
BILLBOARD — R&B DIGITAL SONG SALES
2025年9月20日付チャートで初登場1位(Billboard)。テレビ・映画の話ではなく、実在のセールスチャートの話
さらに同年11月1日付では、Adult R&B Airplayチャートに30位で初登場。AIベースのアクトがBillboardのラジオ・エアプレイチャートに入ったのは、これが初めてだと報じられた。つまり——アメリカのラジオ局が、実際に電波でこの声を流している。
Xania Monet「How Was I Supposed to Know?」
ただし、「AIが全部勝手に作った」と言うと、それは正確ではない。Xania Monetの詞を書いているのは、ミシシッピ在住の詩人、Telisha “Nikki” Jonesという人間だ。彼女が書いた言葉を、Sunoという音楽生成AIが声と演奏にしている。
どこまでが人間で、どこからがAIなのか。この線の引けなさこそが、2025年に音楽で起きたいちばん大きな出来事かもしれない。
※ 記録の混同に注意——No.1はあくまで「How Was I Supposed to Know?」のR&B Digital Song Salesでの記録。別曲「Let Go, Let God」がチャートインしたのはHot Gospel Songs(2025.9.20付で21位初登場)で、これは別の話(Billboard)。「全米総合1位」になった事実はない。
TURN 4 — 人間の耳
で、聴いた人間はどうなったか。
論説やポジショントークではなく、実際に耳で聴いた人間の記録をひとつ。音楽レビューチャンネル「みのミュージック」が、Sunoの新バージョンを自分の耳で検証した動画に付けたタイトルが、これだ。
「もうAI音楽って笑えない」
— みのミュージック、動画タイトル(2025.10.13公開)
賛成でも反対でもなく、まず「笑えない」。この距離感が、いまいちばん正直な気がする。

同動画より。Sunoの画面を前に、実際に聴きながら検証する
「もうAI音楽って笑えない」Suno v5の衝撃
TURN 5 — 編集部メモ
編集部メモ
白状すると、AI音楽については、もう自分の中で答えが出ているつもりでいた。よくできた模倣。感心はするが、それ以上ではない、と。
このMONKEY MAGICを聴いて、少し考え直した。技術がすごかったからではない。単純に、音として面白かったからだ。1978年の疾走感が、ネオンの四つ打ちの上で、まだ全力で走っていた。
面白いと感じてしまった以上、「AIだから」だけで棚から外す言葉を、いまは持っていない。かといって、このままでいいのかという引っかかりも消えていない。両方とも、本当のことだ。
ところで。
あなたには、
どう聴こえましたか。
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