ONE SONG, ONE THREAD — TOKYO 1991 → BANGKOK 2023

夏は終わる。
返事は、来る。

遊園地のプール。高校生のふたり。急な夕立。
「さよなら夏の日」は、そこから生まれた歌だ。
この一曲から、糸を一本ずつ辿っていく。
作った人、歌った人、その人が愛した人、
そして海を渡った先の人へ。

THE RAIN SHOWER東京 — 1991

さよなら夏の日

プールに、夕立が降る。

「さよなら夏の日」山下達郎(1991)

山下達郎公式チャンネル。全編アニメーション、制作は藍にいな(2021年公開)山下達郎の部屋へYouTube

高校時代、ガールフレンドと遊園地のプールへ行って、夕立に遭った。
この歌は、山下達郎の実際の思い出から作られている。

アルバム『ARTISAN』に入って世に出たとき、この曲にミュージックビデオは作られなかった。
初めての映像がついたのは、発売から三十年後の夏。

夕立のあと、水たまりに空が映る。

写真:Acabashi(Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

THE SUMMER OF A BOY1990

少年時代

「さよなら夏の日」が高校生の夕立だとしたら、もっと幼い夏の記憶を歌った曲もある。
井上陽水「少年時代」。1990年公開の映画『少年時代』(篠田正浩監督、藤子不二雄Ⓐの自伝的漫画が原作)のために書き下ろされた主題歌だ。

夏休みの記憶を、ひとりで弾き語る。

「少年時代」井上陽水(1990)

井上陽水、若き日の弾き語り井上陽水の部屋へYouTube

夏は、まだ終わっていなかった。

写真:nanamori(Wikimedia Commons, CC BY 3.0)

「さよなら夏の日」のMVを作ったのは、
もう一つの物語も描いていた人だった。

THE ANIMATOR藍にいな

藍にいなと夜に駆ける

「さよなら夏の日」に初めて映像をつけたのは、アニメーション作家・藍にいな(nina)。
東京藝術大学出身で、YOASOBI「夜に駆ける」(2019年)のMVで一躍知られるようになった作り手だ。

その後もマカロニえんぴつ「好きだった(はずだった)」、オリヴィア・ロドリゴ「drivers license」日本版アニメなど数々の楽曲MVを手がけ、初の作品集『羽化』も刊行している。
達郎の夕立の夏を描いた同じ手が、YOASOBIの夜も描いていた。

「夜に駆ける」YOASOBI(2019)

YOASOBI公式チャンネル。Animation:藍にいなYOASOBIの部屋へYouTube
THE PARTNER竹内まりや

竹内まりやと駅

山下達郎のパートナーは、竹内まりや。自分の言葉で曲を書き、歌うシンガーソングライターだ。

代表作のひとつが「駅」。1987年、中森明菜へ提供した曲を、自身でセルフカバーしたバラードだ。

「駅」竹内まりや — souvenir 2000

竹内まりや公式チャンネル。中森明菜への提供曲を本人がセルフカバー竹内まりやの部屋へYouTube
THE DUET日本武道館 — 2000

プラスティック・ラブ

竹内まりやのライブ「souvenir」。バンドのクレジットの一番上に、山下達郎の名前がある。担当はギター。
夏の終わりの歌を書いた人が、妻の夜の歌の後ろで、弦を弾いている。

「プラスティック・ラブ」feat. 山下達郎 — souvenir 2000

竹内まりや公式チャンネル。Musicians:山下達郎(Guitar)、青山純(Drums)、伊藤広規(Bass)ほかYouTube

夕暮れの桟橋。夏の終わりの色。

写真:Estrategy(Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)

REPLY FROM BANGKOKタイ — 2023

HYBSとTip Toe

「プラスティック・ラブ」は、海外シティポップ・ブームの火付け役になった一曲だ。
四十年の時間を越えて、その音の魂は、アジアの若い作り手たちにも受け継がれている。

タイのHYBS。ジェームズ・アリン・ウィーとカーン・カシデジのふたり組(2024年解散)。
「Tip Toe」は、夜の街をつま先立ちで歩くような一曲。低い声のグルーヴに、古いテレビ番組みたいな映像。
都会の夜という舞台だけが、東京から地続きになっている。

「Tip Toe」HYBS(2023)

HYBS公式チャンネル。HYBS is James Alyn Wee & Karn Kasidej(同映像クレジットより)HYBSの部屋へYouTube

写真:MaedaAkihiko(Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

今年の夏も、
もうすぐ終わる。

東京の夕立から、バンコクの夜まで。一本の糸は、まだ続いている。

Summer is almost over. Again.

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夏の終わりの歌は、この一本だけではない。