さよなら夏の日
プールに、夕立が降る。
「さよなら夏の日」山下達郎(1991)
高校時代、ガールフレンドと遊園地のプールへ行って、夕立に遭った。
この歌は、山下達郎の実際の思い出から作られている。
アルバム『ARTISAN』に入って世に出たとき、この曲にミュージックビデオは作られなかった。
初めての映像がついたのは、発売から三十年後の夏。

夕立のあと、水たまりに空が映る。
写真:Acabashi(Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)
少年時代
「さよなら夏の日」が高校生の夕立だとしたら、もっと幼い夏の記憶を歌った曲もある。
井上陽水「少年時代」。1990年公開の映画『少年時代』(篠田正浩監督、藤子不二雄Ⓐの自伝的漫画が原作)のために書き下ろされた主題歌だ。
夏休みの記憶を、ひとりで弾き語る。
「少年時代」井上陽水(1990)

夏は、まだ終わっていなかった。
写真:nanamori(Wikimedia Commons, CC BY 3.0)
「さよなら夏の日」のMVを作ったのは、
もう一つの物語も描いていた人だった。
藍にいなと夜に駆ける
「さよなら夏の日」に初めて映像をつけたのは、アニメーション作家・藍にいな(nina)。
東京藝術大学出身で、YOASOBI「夜に駆ける」(2019年)のMVで一躍知られるようになった作り手だ。
その後もマカロニえんぴつ「好きだった(はずだった)」、オリヴィア・ロドリゴ「drivers license」日本版アニメなど数々の楽曲MVを手がけ、初の作品集『羽化』も刊行している。
達郎の夕立の夏を描いた同じ手が、YOASOBIの夜も描いていた。
「夜に駆ける」YOASOBI(2019)
竹内まりやと駅
山下達郎のパートナーは、竹内まりや。自分の言葉で曲を書き、歌うシンガーソングライターだ。
代表作のひとつが「駅」。1987年、中森明菜へ提供した曲を、自身でセルフカバーしたバラードだ。
「駅」竹内まりや — souvenir 2000
プラスティック・ラブ
竹内まりやのライブ「souvenir」。バンドのクレジットの一番上に、山下達郎の名前がある。担当はギター。
夏の終わりの歌を書いた人が、妻の夜の歌の後ろで、弦を弾いている。
「プラスティック・ラブ」feat. 山下達郎 — souvenir 2000

夕暮れの桟橋。夏の終わりの色。
写真:Estrategy(Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)
HYBSとTip Toe
「プラスティック・ラブ」は、海外シティポップ・ブームの火付け役になった一曲だ。
四十年の時間を越えて、その音の魂は、アジアの若い作り手たちにも受け継がれている。
タイのHYBS。ジェームズ・アリン・ウィーとカーン・カシデジのふたり組(2024年解散)。
「Tip Toe」は、夜の街をつま先立ちで歩くような一曲。低い声のグルーヴに、古いテレビ番組みたいな映像。
都会の夜という舞台だけが、東京から地続きになっている。
「Tip Toe」HYBS(2023)

写真:MaedaAkihiko(Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)
今年の夏も、
もうすぐ終わる。
東京の夕立から、バンコクの夜まで。一本の糸は、まだ続いている。
Summer is almost over. Again.
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