01 / THE CREDIT
クレジットに、知らない日本人の名前があった。
2022年1月7日、The Weekndのアルバム『Dawn FM』が出た。その3曲目のシングル「Out of Time」の作者欄に、見慣れない2つの名前が並んでいる。Tomoko Aran、Tetsurō Oda。
亜蘭知子と、織田哲郎。1983年に日本で出た曲「Midnight Pretenders」をサンプリングしたからだ。曲の間にはJim Carreyのナレーションが入り、2022年のMTV Video Music Awardsで最優秀R&Bビデオを獲った。
日本で、その2つの名前をすぐに言えた若い人が、何人いただろう。

02 / THE SOURCE
元ネタのほうは、スーパーコンピューターでジャケットを作っていた。
1983年5月、亜蘭知子のアルバム『浮遊空間』。ジャケットはスーパーコンピューターで制作された。「Midnight Pretenders」はそこに入っていた曲で、詞は亜蘭本人、曲は織田哲郎。
2010年代、海外で日本のシティ・ポップが聴かれるようになるにつれて、このアルバムも海の向こうで評価が上がっていった。The Weekndが拾ったのは、その流れの先だった。
日本の夜のために作られた曲が、39年かけて、カナダのアーティストの夜に届いた。

03 / RE-SUNG
海外が見つけた曲を、日本の声で歌い直す人がいる。
Ms.OOJAは、自分の曲と並行して、他人の曲を歌うことをライフワークにしている。歌謡カバーのシリーズ『流しのOOJA』で「MIDNIGHT PRETENDERS」を取り上げた。
サンプリングでもリミックスでもない。1983年の歌詞を、2020年代の喉で、最初から最後まで歌う。海外が「音」として見つけた曲に、日本側が「歌」として返事をした形だ。

ここまでが、1曲の話。
同じことが、ほかの曲でも起きている。
04 / 41 YEARS LATER
19歳の歌が、41年後に世界で回り始めた。
松原みき「真夜中のドア〜stay with me」。1979年11月5日発売のデビュー・シングルで、録音した時、彼女は19歳だった。作曲は林哲司。
それが2020年、発売から41年後に、海外で急に聴かれ始めた。Billboardは、サビの「Stay with Me」という英語のフレーズが、日本語を知らない聴き手の耳を掴んだと書いている。
曲は変わっていない。変わったのは、届く範囲だった。

05 / THE ALGORITHM
オリコン86位の曲を、おすすめ欄が見つけた。
竹内まりや「Plastic Love」。1984年のアルバム『VARIETY』の曲で、編曲は山下達郎。1985年3月25日にシングルとして出た時は、オリコン86位、約1万枚だった。
2010年代後半、8分あるリミックス版がYouTubeのおすすめに何度も出てくるようになり、2019年には2,200万回、2021年には5,500万回再生された。その動画は著作権の申し立てで消えたが、曲のほうは消えなかった。
日本の誰も頼んでいないのに、機械が、日本の夜の曲を世界に配っていた。

06 / NOW
そして2026年、もう一度日本の夜に戻ってくる。
2026年5月13日、SMR RECORDSの『CITY LIGHTS 4th Season』に、田中裕梨の「Midnight Pretenders」が収められた。The Weekndが拾い、Ms.OOJAが歌い直した曲を、さらに若い世代が歌っている。
海外で盛り上がった、で終わらない。元の国に戻ってきて、また新しい声で歌われる。曲は一度出たら、作った人の手を離れて旅をする。この旅は、まだ途中だ。

知らなかった、で止まらなくていい。
今夜、ここから入ればいい。
SOURCES