Special — Just the Chorus, Michael. · vol.1

サビだけ、マイケル。
〜クレジットされなかった16の声〜 vol.1

名前を出さずに、声だけ置いていく。マイケル・ジャクソンが「ゲスト」や「コーラス」として歌った曲を、2号に分けてめぐる。vol.1は1980年代の表通り、8曲。

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あの声は、誰の曲のものだったのか。

1983年12月、Motownから一枚のシングルが出る。歌っているのはRockwell。ところがサビになると、声が入れ替わる。世界中が知っている、あの声に。友達の曲、兄弟の曲、恩師の曲、同じスタジオにいた人の曲。マイケルは断らず、でも主張しすぎず、聴けば一発で分かる声を置いていった。

この特集は、その「名前の出ない16曲」の地図。vol.1は1980年代の表通り、vol.2は路地裏と、時間を飛び越えた声。最後に番外編の5曲も置いておきます。

※各曲の「声の位置」の時間は、動画でのおおよその目安です。版によって前後します。

コーラスの、いちばん上

Stevie Wonder - All I Do

1980年『Hotter Than July』

Stevie Wonder「All I Do」この曲のページへ →

声の位置(目安):サビのコーラス(0:50〜)と終盤(3:40〜)。高い声を探して。

この曲は1980年の新曲ではない。10代のスティーヴィーが1966年に共作し、最初にタミー・テレルが録音したまま、長くお蔵入りしていた曲。それを本人が『Hotter Than July』で歌い直し、そのコーラスにマイケルが呼ばれた。

正直、単体で聴き分けるのは至難です。でも「歌詞が分かるまで」聴くと、急に1人だけ浮く。それがマイケル。

次は、書いて、作って、名前は出さなかった曲。

書いて、作って、名前は出さない

Diana Ross - Muscles

1982年 / 作詞作曲・プロデュース:Michael Jackson

Diana Ross「Muscles」この曲のページへ →

声の位置(目安):サビ(1:00〜)とエンディング(3:30〜)の重なり。

作詞・作曲・プロデュース、全部マイケル。1982年9月にシングルが出て、全米10位、R&Bチャート4位まで行った。ちょうど『Thriller』の仕上げと重なる時期。いちばん忙しい頃に、子どもの頃から知っている恩人に曲を書いている。

人に書いた曲で、自分がいちばん遊んでる感じがする。この図式、この後もずっと続きます。

そして、サビを丸ごと借りられた曲へ。

サビを、まるごと借りた

Rockwell - Somebody's Watching Me

1983年12月 / Motown

Rockwell「Somebody's Watching Me」この曲のページへ →

声の位置(目安):サビ全部(0:33〜)。ヴァースはRockwell本人。

Rockwellは、Motown社長ベリー・ゴーディの息子。マイケルはクレジットなしでサビを歌い、ジャーメインとランディもコーラスに加わった。父ベリーは、マイケルの声が入ったこの曲を聴いて、ようやく乗り気になったと言われている。

結果は全米トップ5、全英6位。いまでもハロウィンのプレイリストの定番だ。

曲でいちばん覚えるところだけ、完全に借りている。ずるい。でも最高。

友達の次は、ビートルズの男と並んで歌う。

遠慮のないデュエット

Paul McCartney & Michael Jackson - Say Say Say

1983年 / 全米1位

Paul McCartney & Michael Jackson「Say Say Say」この曲のページへ →

声の位置(目安):2番(0:55〜)からマイケルが交代。サビは掛け合い。

録音は1981年に始まり、仕上げは1983年。プロデュースはジョージ・マーティン。全米1位、全英2位の大ヒットになった。このデュエットに、遠慮はない。

MVでは2人が詐欺師コンビ。あやしい薬を売る話なのに、画面はやたら楽しそう。

同じセッションから、もう1曲。

半歩うしろのマイケル

Paul McCartney & Michael Jackson - The Man

1983年『Pipes of Peace』

Paul McCartney & Michael Jackson「The Man」この曲のページへ →

声の位置(目安):サビ(0:45〜)のハーモニー。リードはポール。

「Say Say Say」と同じセッションで録られた2曲目。アルバム『Pipes of Peace』に収録され、シングル化も予定されていたが、取りやめになったとされる。

スターが2人いて、片方がわざと脇に立っている。そういう曲、なかなかない。僕はこっちも好きです。

次は、兄の曲。

兄弟デュエットの、いちばん美味しいところ

Jermaine Jackson - Tell Me I'm Not Dreamin' (Too Good to Be True)

1984年 / ジャーメインのアルバム『Jermaine Jackson』

Jermaine Jackson & Michael Jackson「Tell Me I'm Not Dreamin'」(ファンがアップしたライブ映像)この曲のページへ →

声の位置(目安):サビ頭(0:50〜)を2人で分ける。公式の映像が見つからなかったため、ファンがアップしたライブ映像を置いています。

レーベルの事情で正式なシングルにはならなかったのに、ラジオではよくかかり、ビルボードのダンス・クラブ・プレイで3週1位。翌年のグラミー賞にもノミネートされた。

兄の曲なのに、弟の声が一番キャッチーなフレーズを持っていく。兄、よく許したなと思います。

兄弟の次は、母のような存在の曲を「直す」。

サビを直したら、作者になった

Diana Ross - Eaten Alive

1985年 / 作:Barry Gibb, Maurice Gibb, Michael Jackson

Diana Ross「Eaten Alive」この曲のページへ →

声の位置(目安):サビ(1:05〜)。2回目のサビ(2:20〜)は特に分かりやすい。

もとはビージーズのバリーとモーリスが書いた曲。デモを聴いたマイケルがサビの改善を提案し、サビが書き直されて、作者に名前が加わった。バリーとマイケルはバックでも歌っている。

全米では77位と振るわなかったが、R&Bではトップ10、ダンス・チャートでは3位。クラブでは、ちゃんと鳴っていた。

「サビを直す」って、一番ずるい参加の仕方です。曲は相手のもの、でも一番いいところは自分のもの。

vol.1の最後は、子どもの頃から一緒に育った、もうひとりの天才と。

声が、少し大人になっている

Stevie Wonder - Get It

1987年『Characters』

Stevie Wonder & Michael Jackson「Get It」この曲のページへ →

声の位置(目安):2番(1:05〜)からマイケルがリード。最後は2人が同時に。

スティーヴィーのアルバム『Characters』に入ったデュエット。「All I Do」から7年、同じ2人なのに、マイケルの声は『Bad』期の太い声になっている。

デュエットって、たいてい片方が遠慮します。この曲は遠慮がなくて、でもケンカにもならない。長い友達だから、声の重ね方を知ってるんでしょうね。

ここまでが表通り。vol.2は、クレジットの行間へ。

名前は小さく、声は大きい。

vol.2では、もっと見つけにくい場所にいるマイケルを探します。

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